8.周囲の対処法(2)

  前回、周囲の人間がいかにして相談に乗るか、というお話をしました。そのポイントとして、

1.傾聴する
2.助言を焦らない
3.秘密を漏らさない

 という3点をあげ、1.については前回お話しました。今回は、残りの2点についてお話いたします。

 相談にのるとき、相手の心理状態のことは細心の注意を払いつつも、自分の心理状態まで気が回らないことがよくあります。「自分の心理状態が関係する?」といいますと、少し不思議な感じがするかもしれませんが、大いに関係します。なぜならば、相手の感情がこちらに伝わるのと同じように、相手にもこちらの感情が伝わるからです。どのような心理状態で話すのがよいでしょうか。それは、自分が誰かに相談に乗ってもらうときのことを想像するといいと思います。

 皆さんが、相談相手として次の中から選ぶとすれば、どのようなタイプがいいですか?

     A. 自分のことをすごく気にかけ、はらはらしている
     B. 自分の話はきちんと聞いているものの、常に落ち着いている
     C. 声はかけてくれたものの、深くは聞いてくれない
 
 まあ、C,はあまり好ましくなさそうです。前回の共感というポイントを考えるなら、「相手に自分の気持ちが伝わっているな」という実感は大切です。しかし、A.のタイプのように、共感は強いものの、自分と同じくらい動揺している相手はどうでしょうか。なんだか頼りない感じもしますし、下手をすると相手が大丈夫か心配になってきます。相手の不安が自分にも伝わってくると、こちらも不安になってしまうこともあります。

 B.はいかがでしょうか。落ち着いていると、そんなに悩まなくても大丈夫な感じがしてくるものです。A.の例とは反対に、相談相手が落ち着いていると、落ち込んだり不安を抱いている話者も、だんだん落ち着いてきます。相談者は、もしも自分が動揺したりどうしたらいいか分からなくとも、表面的には安定した態度で接する、ぐらいがいいのです。

 診療場面では、本人と一緒に周囲の方も付き添われることもあります。本人の問題は、なかなかすぐに解決しないこともあります。このようなケースでは、周囲も本人と同じく落ち込んだり動揺したりしていることがよくあり、まずは周囲の人に冷静になること、落ち着くことが必要だと伝えることがよくあります。落ち着くことは時に難しいのですが、ある程度、感情的な距離感を保つことが大切です。

 最後に、秘密を漏らさない、ということについて付け加えます。自分に相談をしてくれるということは、相手が自分を信頼しているということです。信頼には信頼で応えなくてはいけません。相談者は、自分に解決できない問題であったり、自分も巻き込まれて悩んでしまったりすると、他の人間に話したくなる衝動にかられます。あるいは、もっと気楽な気持ちで家族や友達に話すかもしれません。しかし、心の悩みは非常にプライバシーの高い問題に関わっていることが多いことから、むやみに他の人に話すことはその人を裏切ることになりますし、時に守秘義務違反など大きなトラブルに発展することもあります。相談を受けたとき、その内容の取り扱いには細心の注意を払いましょう。

 

  今回、周囲の人の心構えについてお話しました。相談に乗るときには、相談者の気持ちが安定し、健康な状態でなくてはなりません。溺れている人を助けるには、自分が一緒に溺れないようにしないと、うまく助けられません。時に、自分の手には負えないと感じることもあるかもしれません。そのときは、自分だけで無理に解決しようとせず、専門のスタッフや医療機関に相談しましょう。診断が違うと、周囲の対応の仕方も違ってくるときもあります。症状が強かったり、治療をしたほうが良い状態と判断されるときも、医療機関への受診を薦めましょう。当院では、本人への治療だけでなく、必要に応じて周囲の方々の対応の仕方についてもアドバイスしております。

 

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